Q
にしむらあきこさんは、工房からの風にどのような作品を出品くださいますか?
A
今回は、「おとひろい」という新作絵本を中心にまとめた展示内容にしています。
言葉を持たない少年が、自分だけの小さな世界から一歩を踏み出し、大切な音を 探すお話です。
一年がかりで取り組んだこの絵本には、かなり熱い思いも込められておりますが、
それについてはらふとさんから発行される「風の音」に語り 尽くしており ますので、
ぜひ読んでいただけたらうれしいなあと思っています。
キーワードは「音」なので、音をイメージしたモビールやアクセサリー、
かたち のパネルなどで、楽しい展示にしたいです。
原画を使ったレターセットや葉書セットも豊富にご用意するつもりです。
「おとひろい」以外にも、絵本を沢山ご用意しています。
小さな椅子をご用意し ますので、座ってゆっくりお読みいただけたらうれしいです。
Q
にしむらさんにとって、工房からの風は、どんな風でしょうか?
A
2009年に参加させていただいてから、今回は二度目の風。
あのときお腹にいた子が、今は5歳になり、私の制作の原動力になっています。
また、2009年の私のブースで、
何十分も迷いに迷ってカードを選んでくれた小学生の女の子が、
今頃は中学生か高校生のお姉さんになっているのかと思うと、
じ ん、と胸にひびくものを感じます。
五年前のあの風は、どんなときもずっと、私の背中に向かって吹き続けてくれました。
ありがとう、というきもちでいっぱいです。
Q
にしむらさんが子供のころ、初めての「ものづくり」って、どんなものでしたでしょうか?
印象的なものを教えてください。
A
手芸が好きな母だったので、多分いろいろと真似して作っていたはずなのですが、
あまり記憶にありません。
ただ、小学生の時、初めてスイッチが入った瞬間が印象的だった出来事がひとつだけあります。
当時マンションの4階に住んでいた私は、
一階に届くまでシロツメクサの首飾りを編み続けようと決心し、
山ほどシロツメクサを摘んできてベランダにどっかりと居座り、
あたりが暗くなるまで孤独に編み続けました。
あの衝動はなんだっ たのだろうと今でも不思議です。
でも、今も何 か良いアイディアやつくりたいものが浮かぶと、
武者震いのような震えとともに「シロツメクサの衝動」がよみがえります。
あれは「ものづくり」の第一歩だったのかなあ、と懐かしく思い出しています。
グラフィックデザインを職業としながら、手漉き和紙の技術を学んだにしむらさん。
素材の恵みと手の技術が、にしむらさんの感覚で結ばれて、独自の世界を創りだします。
前回出展くださった時には、そのセンスと手仕事の融合で、
文房具店をイメージして作られた展開がとても素敵なブースとなりました。
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「きこえる?」
息子を出産したときにみた、キラキラ降り注ぐまばゆいひかり。
甥が生まれたときに感じた、地球上すべてのものからやってくるような祝福の歌。
どちらも気のせいかもしれないし、私の感情の反映なのかもしれないのですが、
ずっと私の心に残り、そのきらめきは消えません。
(にしむらさんのブログより)
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昨年、にしむらさんの個展で発表された手製本に触れて、
じんわりこみあげてくるものがありました。
音をキーワードとしながら文章を書き、
紙を漉き、デザインをし、製本まで手掛けた本。
まずその美しい本の姿、佇まいに見惚れてしまいます。
そしてそこに綴られた、そぎ落とされながらも、ふんわりとやわらかな文章。
ああ、にしむらさんがこの世で一番聞きたい音、
それは、息子のともくんの言葉なのだと静かに伝わってきます。
5歳になったともくんの言葉を、母であるにしむらさんはまだ聞いたことがありません。
そのあふれる思いを、なんて透明感あふれる文章と、
やわらかな和紙の特性を生かした美術に昇華させたことでしょう。
にしむらさんの表現者としての力のすばらしさ。
それは、ジャンルの枠に閉じ込めてしまわずに、自然に実る姿で私たちに届いてほしい。
そう思いました。
もともと言葉がものづくりとともに心にあったにしむらさんは、
今展に向けて、本づくりに力を注ぎました。
そして新たに完成したものがこちらです。
おとひろい
ほんの一部をご紹介しますね。
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56頁にわたる紙と色と言葉とデザインの豊かな調べ。
「おとひろい」をはじめ、にしむらさんのブースのまわりに小さな椅子を散りばめますので、
ぜひ、腰かけてお読みいただきたいと思います。
和紙のこと、言葉のこと、本のこと、、、、。
心に響いたこと、ぜひにしむらさんとお話ししてみてくださいね。
そのことがきっかけとなって、にしむらさんの新しい扉、そして響いた方の扉も、
開いていくように思います。
にしむらさんのブースは、おりひめ神社正面の右側。
木漏れ日の下、どんな音が聞こえてくることでしょう。
にしむらあきこさんのHPはこちらです。
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おまけ
私が撮ったものですが、にしむらさんに満ちた澄んだ光がよく伝わるような気がして。